酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者
(旧:第二種酸素欠乏危険作業主任者)







講習の流れ、感想等

 2003年02月12〜14日の三日間、東京労働基準協会連合会主催で東医健保会館(信濃町駅下車)て講習は行われた。申込みは、事前に申込書と受講料を提出する形態だ。
 講習は一日目学科、二日目学科・学科試験、三日目実技・実技試験だった。講師は東京医科歯科大学教授(酸欠研究)、日本酸素株式会社や消防学校で空気呼吸器について教育している方他。会場は教室形式ではなく、映画館のような座席を備える館内で講師が舞台上でプレゼンする形だ。
 酸素欠乏危険作業主任者の技能講習は一種と二種がある。一種は作業場対象が酸素欠乏のみであるが、今回の二種は酸素欠乏と硫化水素(酸素欠乏等)の二つである。
 酸欠や硫化水素中毒は濃度にもよるが、たった一息吸っただけ倒れる・呼吸停止等の症状が現れ、たった2〜3分で大脳に障害をきたし、又破壊され(一度破壊されると回復されない)死に至るというものである。
 具体的に法律では、酸素欠乏を空気中の酸素の濃度が18パーセント未満である状態(大気中の酸素は21%)、硫化水素(酸素欠乏等)は硫化水素濃度が10ppmを越える状態と、定義されている。
 酸素欠乏と硫化水素の発生場所として、前者は微生物の呼吸や土中の鉄の酸化による(生物的消費)マンホール・井戸・トンネル等換気の悪い場所、又は鉱物や油類の酸化による(化学的消費)タンク・ボイラー内部などで、後者は下水道・パルプ工場・清掃工場など生物の死骸・し尿の分解による硫化水素の発生の他、身近な化学洗剤などでもで取扱いを誤れば発生する。
 兎に角、両者とも換気の悪い場所であり、穴を見たら酸欠等の恐れがあると思えと、医大の教授が強調していた(深さ1メートルの穴でも一命取る)。
 そこで、作業主任者は換気を遂行しなければならないのだが、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の職務としては…
  1. 作業に従事する労働者が酸素欠乏等の空気を吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指示すること
  2. その日の作業を開始する前、作業を行う場所の空気中の酸素濃度及び硫化水素の濃度を測定すること
  3. 測定器具、換気装置、空気呼吸器等その他労働者が酸素欠乏症等にかかることを防止するための器具及び設備を点検すること
  4. 空気呼吸器等の使用状況を監視すること
 …がある。

 講習科目は…

学科
 「酸素欠乏症等及び救急蘇生法に関する知識」3時間
 「酸素欠乏等の発生の原因及び防止措置に関する知識」4時間
 「保護具に関する知識」2時間
 「関係法令」2時間30分
実技
 「救急蘇生の方法」2時間
 「酸素濃度及び硫化水素濃度の測定方法」2時間

 …である。

 実技の酸素濃度及び硫化水素濃度の測定方法の手順は次の通り…

酸素濃度の測定法 硫化水素濃度の測定法
拡散式測定器
増巾式
北川式
T.仕業点検
1.電源関係
・切替スイッチを電圧(BATT)に合わす。
・電源スイッチをチェックする。「バッテリチェックよし」
T.気体採取器の仕業点検
「ポンプの仕業点検を行います」
1.検知管の確認
・ガス名の確認。「ガス名、硫化水素よし」
・測定範囲の確認。「1〜150ppm測定可能でSB型よし」「有効期限よし」
2.センサー関係
・切替スイッチを測定(MEAS)に合わす。
・スパン調整ボリウムを右に回し、センサ出力をチェックする(23%以上)。
「センサー出力23%以上よし」
・指示を再び21%に合わす。「21%よし」
2.気密の確認
「検知管取付口、締付よし」
・両端が切っていない新しい検知管を取付口につなぐ。「未使用検知管取付よし」
・ハンドルを完全に押し込む。
・ハンドルを一気に引いてロックし、1分間待つ。
・ハンドルを90度回し、ゆっくり戻す。
・空気の漏れが無い事を確認する。「漏れ無し」
3.ケーブル関係
・ケーブルコネクタの接続、締付を点検する。「締付よし」
・断線、接触不良を点検する。「断線無し」
・電磁誘導障害を受けていないかをチェックする。「誘導障害無し」
U.測定
・21%指示を再確認する。「21%再確認よし」
・センサーの先端を測定箇所に入れる。
・ケーブルを上下させて拡散を助け固定する。
・指示が十分安定したら読み取る。「酸素濃度〇〇%です」
U.測定
3.延長採取管の目視
・延長採取管を採取器に取付ける。
・検知管の両端をカッターで切り取る。
・検知管を採取器に取り付ける。
・検知管の先端を測定箇所に入れる。
・採取器のハンドルを一気に引き、1分間待つ。
・ハンドルを90度回し、ゆっくり戻す。
・検知管を取り外す。「硫化水素濃度〇〇ppmです」
V.あとしまつ
・センサーを引き上げて暫く待つ。
・指示が18〜21%の間に戻る事を確認する。
「指示が18〜21%の間に戻りましたので測定を終了します」
・電源を切る。
V.あとしまつ
・使用済みの検知管を安全な所に始末する。
・延長採取管を採取器から取り外す。
・検知管取付口を採取器に取り付ける。

 全体的な感想は他の技能講習と比べ、実際に酸欠作業に従事しなくとも、特に役に立つ勉強・訓練が出来る講習だと感じた。
 それは、ドライアイス一欠片で命取りになったり、換気の悪い地下空間、夏場の溺死だったり等、身近な所でも酸欠・硫化水素中毒は起こりうる災害である事だ。
 本講習を通じて私達はあらゆる場所で自ら酸欠の危険性を察知し、日々意識する必要があると痛感した。

教訓:酸欠で死んではいけません。



使用テキスト等


厚生労働省安全衛生部労働衛生課編,『酸素欠乏症防止規則の解説』,中央労働災害防止協会,2002.10


  

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